そろばんは、暗算をするだけでなく読み上げられた数字を計算する読上算(よみあげざん)と呼ばれる競技もあります。「御破算(ごはさん)」や「御明算(ごめいさん)」「~円也」などの掛け声を聞いたことはありませんか。掛け声の意味が分からず、そろばんは難しそうと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そろばんの掛け声の種類や意味、由来について解説します。そろばんの掛け声について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
そろばんには、おもに以下の競技があります。
このなかで、掛け声を使う競技が読上算です。読上算では、以下の3つの掛け声を使います。
まずは、これらのそろばんの掛け声の意味について解説していきます。
「ご破算で願いましては」とは、読上算の問題を読み上げるときに最初に言う掛け声です。「読上算の問題を読み始めます」という意味があります。一般的に「願いましては~」からはじめるのですが、「ご破算では」を加えて「ご破算で願いましては~」とはじめることもあります。
御明算、または御名算とは、計算結果が正解だった人に対して言う掛け声です。「正解!」という意味があります。生徒が口頭で発表した読み上げ算の結果が正解だった場合、その生徒に対して指導者が「御明算!」と言います。
「~円也」とは、読上算で足す数値を読み上げるときに使う掛け声です。たとえば123+456を読上算で出題すると、「(ご破算で)願いましては、123円也、456円也、では」といったように、読上算では問題の最後は「では」で終わらせます。
ほかにもそろばんには「計算用意、はじめ!」や「止め!」の掛け声が使われます。「計算用意、はじめ!」はそろばんの練習や検定試験、競技会などで指導者が「時間の計測をこれからはじめます」という意味の掛け声です。
「止め!」は、制限時間が来たことを知らせる掛け声です。こちらも練習、検定試験、競技会などで使用されます。
そろばんの読み上げ算では、「123+456はいくつですか」→「(ご破算で)願いましては、123円也、456円也、では」と難しい言葉が使用されています。そろばんの掛け声に難しい言葉が使われている背景には、そろばんの持つ歴史が関係しています。
そろばんは室町時代に中国から日本に伝わり、江戸時代に入ってから庶民に広く普及した歴史があります。そろばんが庶民に普及した当時は、数字表記が漢数字でした。さらに日本語を書くときは縦書きだったため、横に計算をしていくそろばんはとても使いにくかったといわれています。
また、当時紙は貴重品だったこともあり、数字を読み上げる人と、そろばんで計算する人のふたりで行っていました。これが現在のそろばんの読上算の原型です。江戸時代に使っていた言葉がそのまま掛け声として残っているため、現在でもそろばんの掛け声は難しい言葉となっています。
江戸時代の言葉で「ご破算で」は、そろばんを払ってゼロにする、さらに「願いましては」は「それでは、これから計算をお願いします」という意味があるそうです。
金額ではない数字の計算でも「~円也」とつけるのは、江戸時代に商用の計算としてそろばんを活用する機会が多かったことから由来しているといわれています。江戸時代に入ってからは築城や築堤に関する計算でもそろばんは使われるようになりましたが、庶民が計算をする機会は商用が圧倒的に多かったためです。なお、「也(なり)」は、数ごとの区切りを指しています。
これらの掛け声を使って、江戸時代の大店(おおだな)で番頭が読み手となって、丁稚(でっち)たちに帳簿の計算をさせるのがおもなそろばんの使われ方でした。
中国から伝わり、計算方法として日本の庶民に広がったそろばんは、現在でも日本の文化のひとつとして知られています。計算機など、そろばんがなくても計算できる機械や技術は多く誕生しましたが、暗算によるスピードや集中力を磨く競技としてそろばんは注目されています。
そろばんは、日本の文化のひとつとして海外からも人気となっています。たとえば、海外のインテリアアイテムとしても人気が高く、海外へのおみやげとしてそろばんを持参する人も増えてきました。メーカーや教室によっては、英語やドイツ語、フランス語、スペイン語など世界各国の言葉に翻訳された説明書と、そろばんがセットになった海外おみやげを展開しているところもあります。
また、海外でのそろばん指導を目的とした「国際珠算普及基金」や、青年海外協力隊からトンガへそろばん指導の隊員を毎年派遣するなど、算数に限らず、基礎教育としてもそろばんは海外から注目されています。
そろばんの読上算で使用されている掛け声の意味や、掛け声をふまえたそろばんの歴史について解説しました。中国から日本へ伝わり、長い歴史のある文化として根付いているそろばん。また、インテリアとしても、習い事としても海外で注目されています。興味のある人は歴史についても学んでみると、よりそろばんへの理解が深まるでしょう。
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